理事長挨拶

NPO法人日本タッチ・コミュニケーション協会は、全ての方々、とりわけ将来を担う子ども達の心と体の健康増進を目的に、2003年に設立されたNPO法人です。2000年から産婦人科をフィールドに「ベビーマッサージの母子へのストレス軽減効果」について研究を始め、医学学会などで発表。その後、NHKの報道番組などで全国的に取り上げられ、一気に「ベビーマッサージ」が日本中に広がりました。
私たちが、最も大切にしてきたことは、「心」に焦点をあてた『行為を行う時の気持ちの持ち方』でした。
タッチ・コミュニケーション🄬とは、人と人とが心で繋がる触れ愛術です。心理学的には、無条件の愛と許し、またカウンセリングマインドをもって人と交流する方法のことと定義しています。ベビーマッサージはタッチ・コミュニケーションの一つの手法として研究いたしました。

例えば、私たちが赤ちゃんの立場で、ベビーマッサージを行ってもらうとしたら、どのような気持ちでお母さんにマッサージして欲しいと思うでしょうか。
「大好きだよ」「かわいいね」と心をこめて撫でてもらうのと、「早く、寝て欲しい」「あなたが寝たらママは未だたくさんやることがあるのよ」と少々イライラしながら撫でられるのでは、同じマッサージのストロークであっても、赤ちゃんの心に伝わる何かが違います。マッサージする時の心の持ち方が重要なのです。
親子のタッチ・コミュニケーションセミナーでは、ベビーマッサージの手技手法にこだわり過ぎず、赤ちゃんに触れる時の気持ちの持ち方を大切に、触れ愛術をお伝えしています。

ところで、私は大学でインド哲学を専攻しました。そこで研究対象としたのは、「常に心を行為に繋げ、結果を期待せず、行為に集中するという『カルマヨーガ』の考え方でした。
つまり、行動を起こすときの源となった心的エネルギーの質、そして行為を行なっているときの気持ちの持ち方が結果に影響を与えるということです。タッチ・コミュニケーション🄬は、この考え方を基盤にしています。

次に当法人のコンセプト、それは「安心の場づくり」です。
子育て中のママから、「心無い対応をしてしまったと、子どもの寝顔を見ながら後悔してしまう」と、よく相談を受けます。少子核家族化の影響で、ほとんどの方が育児体験を持たないまま出産を迎えます。育児不安や育児疲労でストレスを抱えやすいのは、個人の問題というより、社会的課題でもあります。
今後AIの普及など、さらに激動の時代を迎えることが予想されています。生物にとって、変化はストレスです。このようなストレス社会で暮らす私たちにとって、「心無い対応」は、子育てに限らずそれは誰もが陥りやすい同様の課題でもあります。心身共に疲労が重なると、誰でも客観性を失い、怒りも出やすくなるものです。だからこそ、疲れた時ほど「タッチの安心の場」をご活用いただき、皆さまの心身のケアとしていただきたいと願っています。

また、このように大きく時代が変わろうとしている今、私たち、そして次世代を担う子ども達が心折れることなく、レジリエンスに生きるための学びの場として、2020年より「心と体の健康大学」を開講いたしました。本大学は、『人間力を養う!』を総合テーマに、多様な分野の専門家を講師に招き、年10回広島県赤い羽根共同募金会事業の補助金を活用して開催しております。
これからも「安心の場」で皆さまと共に学びあい、地域社会に貢献したいと願っております。

NPO法人 日本タッチ・コミュニケーション協会
理事長 宇治木敏子